前書き
第2章lost butterflyの感想はこちら
第2章ではじめて本格的にFateシリーズに触れた人間だから、関連知識に精通していない。そんな人間でも第2章は抜群に面白かった。
だからこそ第3章に鑑賞にあたって、あえて知識を増やさずに展開を知らないままを保った。感想も、原作を知らないうえで映画単体で書いてます。
結論からいえば、題名の通り手放しで絶賛とまではいかなかった。
第2章が120点なら第3章は80点くらい。
8月15日公開の直後にみてその後時間を空けて数回、4DXも体験済み。そしてBDでもう1度見返した。
視聴済み アニメFate zero
テレビ版UBW
HF1~3章
間違いなく良かったところ
映像、音楽、声。表現に関するだいたいの部分はよかったと思うけど、いちばんよかったと感じたのはエンディング。
エンディング曲を最初にyoutubeで聞いたとき、歌自体は1章の「花の唄」、2章の「I beg you」と比べるとあんまり印象強くなかった。
映画館できいた印象は3曲のなかで1番だったね。映画が歌のよさをひきだしているのか歌が映画のよさをひきだしているのか、相乗効果がすごかった。
終わりがよかった。完結編で最も重要な点をおさえてる。
あと、説明部分でなんとか破綻はしていないところ。
イリヤが聖杯戦争について解説するところとか、宝石剣を投影するところとか、原作がノベルゲームであることからすと相当量説明があったはず。それを映像化してなんとか収めてるっていうのはすごいと思う。
アンリマユの説明を初見で理解することは不可能だと思うし、数回みてもあまり飲み込めなかったからさらっと済ませたのは映画としては正解だった。
個々のシーンで好きなやつは
①言峰が臓硯を詠唱して攻撃するシーン
これは単純に詠唱自体がかっこいいと思う。ノベルゲームだからこその良さ。
②ライダーvsセイバーのシーン
ライダーと士郎の距離感だからこその信頼が光るのが渋い。画面がド派手だけど(洞窟崩れるんじゃないか)。信頼しあった仲のライダーの名前を忘れて言峰の名前を覚えてる士郎・・・
③士郎と言峰の殴り合い
時間切れで決着がつく=士郎が言峰の思想を打ち砕けたわけではないところがいい。
正直に微妙だったところ
メインヒロインであるはずの桜と士郎の関係性描写が薄かったところ。
1点だけあげるとするならこの点になる。
確かにUBWは凛というよりは士郎とアーチャーの話だったから、HFでイリヤや言峰や聖杯戦争そのものや善悪の話がメインにフォーカスされても不思議ではない。そしてFateの大団円のルートとしてはストーリー上必要な要素である。数回みた今はそう思う。
けれど、第2章をみたら士郎と桜の話を期待する。私以外の人もきっとそう。
士郎と桜の関係を考えたとき、二人がガチで衝突するシーンがなかったのは超残念。
3章の序盤に桜が襲来したときに士郎の足が震えてなにもできないシーンがあったけど、黒化した桜に対して受け容れがたいものを感じている。そして言峰が看破していたように黒化したときに出る面も桜の一部であるとしたら、その黒桜に士郎が相対するシーンがないといけないのでは。
けれど次に士郎が桜と本格的に対面するのは大空洞のラストシーン、士郎がつぶやいたとおり凛が桜をなんとかしたシーンの後だった。つまり、Fate3ルートでずっと秘められていたヒロインの暗黒面を受け止めたのはヒロインの姉だったわけだ。
Heaven's Feelの真骨頂は凛と桜の関係にあった、これが率直な感想。
これが悪いというわけではない。凛と桜・士郎とイリヤという姉妹姉弟という関係がフォーカスされていても話としては成立しうる。
凛と桜については1章から丹念に描写されていたし、2章の感想記事でも書いたように素人が3章で凛と桜の関係性を期待するくらいには伏線があった。
一方で士郎とイリヤについてはここまで前面に出てくることは意外だった。イリヤの生い立ち関係の匂わせ(切嗣の話とか)とかはあったしもう一つの聖杯である桜への関心も描かれていたから話の本筋に関わると思っていた。でも関係性描写ってそんなにあったっけ?
それで第2章を見返してみると確かに二人で買い物に行ってるシーンとかあるわ。ダイジェスト的にカットされてるけど、関係を深めてる描写があるんだね。
皮肉な話だけど、2章を士郎と桜の話にフォーカスさせた割を食ってるのかもしれない。2章の完成度をあげた反動で3章が描写不足に感じられる構成になったとか。あるいは原作からしてこんな感じなのかな。
2章までとは打って変わって士郎と桜の関係性描写が薄かったこと。期待していたものが出てこないというがっかり感を差し引いても、全体のバランスとして問題があったと思う。
間桐桜というキャラクター
HFのメインヒロインである桜、1章2章ではよくありがちにみえた後輩キャラが実は・・・というギャップとか士郎にUBWまでとは違う選択をさせる存在であることとかどちらかといえば舞台装置としての魅力が強かった。3章でようやくキャラの魅力が高まったと思う。
1番よかったのは凛に恨み節を投げつけるシーン。姉をヒーロー視してると同時に途方もなく妬んでて、てっていう2面性があるからこそ悲劇のヒロインで終わらないキャラクター。そこが良かったからこそ、その状態で士郎とも相対してほしかったのだけど。
物語はハッピーエンド的な方向で終わったけれどもなお物語は桜に対して厳しいように思う。桜が背負うべき罪はどれくらいだろうか。
大量虐殺したといっても臓硯おじいちゃんに植え付けられた影の意識でやってるし、明確に殺意をもったおじいちゃんは幼少から虐待をしてきた相手だし慎二おにいちゃんは常習レイプ魔だし。殺人の結果はあっても負うべき責任はほとんどないんじゃないか。
ハッピーエンドに至ってなお自分に帰責されるべきでない罪への意識とともに生きていくというのは重過ぎる業じゃないかと思ってしまう。恋人の士郎、姉の凛、怪物になる運命の理解者のライダーと、全員揃ってやっと支えられてる感はある。
それでもなお、桜に最も必要なのは桜の背負うべき罪の軽さを正確に指摘できる大人なような気がする。しかしそんな存在が桜に与えられることはなく、本人も欲しがらず。
だからエンディングにあってもなお世界は桜に厳しい、と思う。
結び
Heaven's Feelシリーズの完結までみて、映画だけの感想でいえば良い作品だったと思うけれども、2作目が単体として抜けている印象は否めない。
そして2作目の完成度、士郎と桜の話として綺麗にまとまっていることが、完結作である3作目にしわ寄せをもたらしている、とても皮肉な構造。
これが原作の問題なのか映画の尺の短さの問題なのか、いつか原作をプレイして確かめたい。せっかくだからPC版のほうを、いつか。