四半世記

感想文ページ(ネタバレあり)

凋叶棕国内初ライブの感想

待望の凋叶棕国内初ライブへ行ってきました。

このサークルはまたひとつ違うステージへ行ったんだなと感慨深くなりました。

 

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セトリ

 

東方うた祭り(https://www.uta-matsuri.com/)という東方音楽サークル7組が登場するライブイベント。

登場は2組目、歌った曲は3曲でした。ちなみに前日にセトリ予想をしたのですが全部外れでした。これはこれで珍しい。

ライブ明けで感情が昂っていたりするのだけど、せっかく新規が流入しうる機会なので感想抑えめにライブの感想をご紹介。

 

禁符「フォービドゥン・ゲーム」(『掲』収録)

フランドールの狂気な側面にフォーカスをあてた曲。メロディも歌声も不安定で、だからこそ切実さが宿る、そんな曲。

この曲の最大の特徴はサビの部分の壊れたような音程の叫び部分。凋叶棕のフラン曲のなかでも最も狂気的で、全曲でみても有数の音程の高さ。

原作の弾幕から解釈したフランドールの手のつけられなさを象徴したこの最大の盛り上がり部分で、U.N.オーエン原曲のメロディを主旋律ではなくバックに使う。これが凋叶棕というサークルの姿勢を端的にあらわしている。

 

私はセトリ予想では董子の曲を予想していたけれども、確かにフランも董子と同様に凋叶棕ではnayutaさんに当てられているキャラだった。だからフラン曲もありえるかもとは思っていたけれども、あるとしたらこの曲ではなくClosed Rain(奏)のほうかなと思っていた。

だってこの曲はあまりにも難しいから。

だからnayutaさんが登場してこの曲を歌いだしたときの正直な感想は「えぇ・・・」だったし、家に帰ってあらためてこの曲を聞きなおすと「これをライブで歌わせたのか・・・」となる。

それでも発狂部分で声がかすれることなく歌い終えたのだからこれはほんとにすごいことなんだと。聞き終えたときには凋叶棕もライブが出来るんだ!ということに確信をもてた。

 

この曲のフランドールの歌詞が気に入った人はぜひ「Ultimate;Nervous;Obscured;Weird;Egoistic;Nasty;Girl」というフラン曲もおすすめ。

『東方魔法少女 アルティメット☆れいむ』という合同アルバムが出典で入手は現状困難だけれども・・・。魔法少女というアルバムのコンセプトに逆説的にアプローチしていて、異色な正統派フラン曲。

 

鳥よ(『娶』収録)

上海で行われた初ライブでも披露していた曲。

ちなみにそのときの様子は

www.youtube.com

この動画でちらっとだけみることができる。

 

鳥よ、は凋叶棕らしい物語音楽の曲。

鶴女房的な男と鳥の異類婚姻譚、老いて死の床の前にかつて想いをよせた鳥があらわれて・・・的な話。

これはいくつか解釈できて、本当にかつての鳥が死ぬ間際だけ戻ってきたというロマンティック説、老いぼれのみた幻という辛辣説、そもそも鳥とそんな関係になかった虚無説とかいろいろ。

RDさんのなかで正解はあるかもしれないけど、聞く分にはどう解釈するかは受け手の感性に委ねられる、奥の深い作り込みが光る。ちなみに私は辛辣説派。

 

サビの鳥よ…鳥よ…の部分を観客とともに歌うというライブ的演出が試みられて、会場の結構な人数が凋叶棕を知らないと思われるなか結構うまくいってたと思う。

あと光の演出がよかった。サビでステージ全体をぱぁーっと照らして空をイメージさせる感じの。この演出で生歌を聞くと辛辣説派の私も少しロマンティック説派に心を動かされた。

 

「テーマ・オブ・カーテンファイアーシューターズ」-History 3/3+‐

2曲目が終わって凋叶棕主宰のRDさんが登場してMCを挟んで3曲目。

MCではRDさんが、ライブは双方向のコミュニケーションでそれはそれで結構なのだけれど東方の二次創作なのだから”天”へ想いをむけなければならない、というような旨のことを言っていて、それを受けてのこの曲。

”天”がなにを指すか意見が分かれるかもしれないけれど、私は素直に原作のゲームを思い浮かべながらこの曲を聞いた。この曲は東方原作とそれをプレイする弾幕シューターを描いた曲だった。そういう意味では原作を介した双方向のコミュニケーションともいえる。

 

今回披露されたバージョンは新バージョンで、既存の2つは『』に収録されている。違うのは大サビの原作を歌った部分で、

History 2/3が紅魔郷から輝針城まで

History 3/3が小数点以下の派生も含めて紅魔郷から弾幕アマノジャクまで

そして今回のHistory 3/3+が深秘録、紺珠伝、天空璋、憑依華、ナイトメアダイアリー、鬼形獣までの既発売作品を歌った歌詞が追加されている。

 

新バージョンはありがたいことに公式でyoutubeとニコニコに投稿されているため、追加部分を拝聴することができる。

 

並べると感慨も深い、とひとことでは言い表せない。すべての原作をプレイしている人は東方を認知している人の中でも少数派だろうけど、すべてやっていなくとも惹かれるものがあるに違いない。

正直にいってしまうとライブ中は新規部分の歌詞はほとんど聞き取れなかった。あらためて聞いてみると大サビ部分はただ長くなっただけじゃなくて歌う調子も変化が入っててさらに鬼畜難易度になっている。3/3+を聴いたあとに2/3を聴くとすごくシンプル。

 

1曲目から客のほうが引いてしまう高難易度選曲、2曲目ではただ歌うだけではなく鳥よの部分を観客に歌わせる誘導、そして3曲目では長尺の新規盛り上がりどころと、最後まで無事に歌い上げたnayutaさんには敬意しかない。

3曲しかないと聞いたときは少ない!と思ってしまったけれども今回に関しては3曲でよかったというは確実にいえる。長年のファンからみてもとても満足のいくステージで、ひょっとしたら単独ライブも絵空事ではないのかもしれないと思わせてくれいた。

でも、もし単独ライブという機会があってくれたら複数のシンガーか間をつなぐRDさんの高速MCタイムが必要だと思う。生で聞くと曲の歌い手殺しっぷりがすごいから。

 

 

自由への賛歌

2012年の冬に岸田教団へ楽曲提供した曲、ライブイベント7組目としてトリを飾る岸田教団でまさかのお披露目。 2012年冬というと辿/誘と同じ頃だから結構昔の曲。

CDに収録されているのは完全版ではないらしく(このページに事情の一端がかかれている)様々な事情から完全版は永遠にお蔵入りしたと思っていたのだけれど、いつか完全版がなにかに収録される…かもしれない。期待しないで待つくらいはできるかもね。

 

というような事情でこれまでこの曲が話題になることはファンの間でもあまりなかったのだけれど、これはなかなかエモい歌詞の曲なのだ。エモという言葉が今より一般的でなかった頃に作られたのだけど、今日的なエモいという言葉がぴったり。

方向性は違うけれどThe Boogey Monster(眇)と並びうるエモさ。

今回をきっかけにいつかこの曲が日の目を見る機会があればいいなー。

 

その他イベントについて雑感

私は陰キャなのでライブはほとんど行かないし、まして今回のようなオールスタンド系のライブは初めてだった。同じような境遇の人の参考になるかもしれないので備忘録をば。

 

まずオールスタンドという環境は0か1の世界だということ。利益率を上げるために狭い空間にできるだけ人を押し込むというスタイルであるため、空間的にはかなり劣悪。

今回のイベントは15時開始で20時半終了の5時間半という長丁場で、はやめに行ってセトリを確認しない限りいつどのグループが出てくるかわからない。わかったとしても遅い登場の場合、いい位置をとったとしてもそれを死守しなければならない。ぎゅうぎゅう詰めの空間であるがゆえに一度出るといい位置には二度と行けないから。

ならどうやったらいい位置に行けるかという話になるが、早くにチケットを買うしかない。整理番号がついているから当日早くに行ってもいい場所はとれない。

ちなみに新宿ReNYという会場で私はA300番台というチケットで前から3列目くらいだった。見える景色という観点ではよかったけれども、途中で腰が痛くなって一回離脱した(だから自由への賛歌は入り口付近で聞いた)。狙うんだったら最前列しかない。そういう意味で0か1。よっかかる場所があるのと、前に人がいないのとで随分違うはず。A30番台くらいだと一番前に行けるかなー?

ずっと狭い空間に立っているから体も痛くなるけど他人の臭いも結構きつい。制汗剤噴射はやめたほうがいいけれども、小さいかばんに気分転換できる匂いを用意しておくといいかも。

 

終了後は物販と、並んでいなければ少しくらいはお話しする機会がある。当日に感想をいえる貴重な機会。意を決して部屋から這い出したなら最後まで味わい尽くすべき。その価値のある機会だった。