四半世記

感想文ページ(ネタバレあり)

常盤貴子が「連ドラの女王」だった時代<グッドワイフ主演>

常盤貴子について

 

常盤貴子が久しぶりに連続ドラマの主役をやる。

ワンクールの連続ドラマで主演となると『ロング・ラブレター~漂流教室』(2002年)以来だろうか。

1月13日から開始のTBS系日曜ドラマ『グッドワイフ』

公式はこちら

www.tbs.co.jp

 

今や目新しくないアメリカのドラマの輸入、しかも最近しょっちゅうドラマでみる弁護士ものと不安要素満載。

しかし常盤貴子のビジュアルはなかなかすごい。2019年1月現在46歳、来年47歳になるとは思えない美人さ。

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公式サイトインタビューページ(https://www.tbs.co.jp/the_good_wife2019/interview/)から

常盤貴子という人はこれから紹介するようにバリキャリという感じで売ってきたわけではないし、キリっとした見た目とちょっと低めな声のなかに見せる甘さみたいなものを武器に売ってきた(主観)ので、設定的にミスマッチかもしれない。

原作のアメリカドラマからいかにオリジナル要素をしのばせるかが成功の鍵だろう。

 

また、ジェンダーロールが揺れ動く現代において、”出産で弁護士をやめ専業主婦として子供を育てた”、”16年ぶりに弁護士に復帰する”といった扱いが難しい設定をどう調理するか、も重要である。

 

 

 

常盤貴子は、91年頃からデビューし93年の『悪魔のKISS』で有名になり、95年の『愛してると言ってくれ』で名をはせた。95年~99年くらいは2クールに1回くらいは主役をやっていた。この時代が「連ドラの女王」と言われていたころだろう。

その後は活動領域を映画や舞台に移していく。

 

私はリアルタイムではみていないが、韓流ドラマが席巻する前の夕方再放送枠でいくつか見たことがある。

昔の連続ドラマは配信サービスがまったく充実していなくてDVDレンタルくらいしか観る手段がないが、せっかくの記念にあらすじと短評を紹介してみたい。

当時の役の名前なんて誰も覚えてないだろうから役者名で話します。ネタバレもしてます。

 

 

悪魔のKISS(93年)

二十歳くらいの若い女性3人が性地獄・宗教地獄・借金地獄にはまる様を描く、放送コードが厳しくなる前の時代を感じさせる問題作。新興宗教活動やサラ金地獄、性風俗も扱っていて、今放送出来たらカルト的な人気が出るかもしれない。

常盤貴子はこのドラマのヌードシーン、端的にいえば乳首を出すシーンで有名になった。

ちなみに所属会社が版権を買い取っていてDVD化されておらず、合法的に観る手段はない。

 

サザンオールスターズのエロティカセブンがやたら売上が高いのはこのドラマの主題歌だったからである。

 

愛してると言ってくれ(95年)

豊川悦司演じる聾唖の画家と常盤貴子演じる劇団の卵の、いわゆる障害乗り越え系恋愛ドラマ。視聴率平均20%を超えるなかなかのヒット作。

このドラマはとにかく豊悦がエロい。白いシャツ中心のシンプルなファッションに、高身長、大きい手による手話、整った顔。

豊悦と常盤貴子は役的にも役者的にも年齢差があってそれがストーリーにも反映されている。すなわち、常盤貴子が嫉妬したりなんかして豊悦が宥めるというパターン。そういう恋愛に耐えられるなら今でも観られるクオリティだと思う。

終盤、常盤貴子が気の迷いで幼馴染の男と関係をもつシーンがある。スタッフの間でも意見が割れたそうで、最終的にはプロデューサーの鶴の一声で決まったらしい。

個人的にはそこでやったら全部おしまいじゃんと思いましたけど。

あと印象に残ったのは、「あなたと一緒にいてもつまんない。だって手話ってすごい疲れるし、それに好きなCDだって一緒に聴けないもん」というセリフ。手話で表現してるんだけど。

それをいってしまうのは未熟だと簡単に断じることもできるけど、こういう本音を抱えてしまったらそれだけで生きるのがつらくなるから、いかに抱えないような性格になっていくかが関係の継続のための秘訣かなと。

 

真昼の月(96年)

常盤貴子が演じるアナウンサー志望のヒロインが1話でレイプされ、そのトラウマと向き合う様を描いたドラマ。忘れようとしてもそのトラウマは真昼の月のようにそこにある。全体的に重々しく、暗い雰囲気が続く。これを1クールやったという社会的意義は評価されるべき点だろう。

まだ刑事として名を馳せる前の織田裕二が相手役なのだけど、若々しい。彼が草野球をやってるシーンがこのドラマの数少ない気楽に観られる場面なので、このドラマを観たら野球を好きになるかもしれない。

最終的に常盤貴子はトラウマを「克服」して恋愛関係を成就させる。大変結構な結末で、もやっとするものがないわけではないがまあ20年以上前の大衆ドラマということを考えればそんなものなのかな。

 

ひとり暮らし(96年)

全体的に中途半端なドラマ。1話はよかった。冷蔵庫の音を聞いて孤独を感じながら夜を明かすというのは共感できる人が多いと思う。

ひとり暮らしについて描きたかったはずだが、中途半端に恋愛要素が悪目立ちしてなにをやりたいのかわからないドラマになっていた。

永作博美が常盤貴子に執着するという百合要素もあるのだけど、最終回前に突然睡眠薬を飲ませて頬ずりをしたりベッドで下着姿で抱き合うという場面が出てきたかと思えば、最終的には二人は別の道を行くというよくわからない展開になる。

ここらへんの展開の無茶苦茶さはいかにも昔の時代の無理解って感じがあって、もうちょっとうまく料理すればそれなりに観られる作品になったのにと思う。

実写ドラマにおいてそのシーンのレア度はあるのでそれ目当てにみることもなくはないが、最終回付近にいくまでがつらい。親友の恋人を寝取ることに百合を感じる人ならいけるかもしれない。

 

理想の結婚(97年)

常盤貴子と竹野内豊が1話で勢いで結婚することとなって家族に許容されるまでを描いたホームドラマラブコメディ。

竹野内豊が相手役だが、ドラマの実質的なヒロインは姑役の野際陽子といえなくもない。

このドラマは畢竟、関西弁ばりばりの常盤貴子を鑑賞するドラマである。こてこての関西弁でまくしたてるように喋りまくるのは素に近いらしいが、他の役ではみられずオンリーワンみがある。ショートヘアも可愛い。

この点を了解してみれば佳作くらいのクオリティはある。

 

全体的に陽キャ感あふれるコメディだが、家同士の価値観の違いという問題は普遍的な問題である。同性婚が一般的になるこれからの時代においてこのテーマは再び考慮される時がくるであろう。

 

最後の恋(97年)

医学部生の中居正広とホテトル嬢の常盤貴子の恋愛ドラマ。

今は亡きSMAPの中居正広の数少ない恋愛主題のドラマ。物珍しさはあるが、そんなに成功していたとは思えない。

ドラマ全体としても、中盤以降の失速を感じる。常盤貴子は弟の手術代のためにホテトル嬢になり、なんやかんやでそれは中盤に弟が死んでひと段落する。それ以降はいわゆる「身分」違いの恋的な要素が前に出て、売春の過去が勤め先の病院にばれたりという展開になる。

この後半がなんだかパッとしない。二人の関係性が掘り下げられずただ外圧だけで離れることにしてでも未練がましく思い出したりして、ラストによりを戻す。あまり説得力を感じない展開。

 

このドラマで一番印象居残ってるのは中居正広がテレビで野球中継を観てるシーン。97年は巨人が清原をFAで獲得して世間の反感を買いシーズンも低迷した年で、巨人戦を観ながら「また負けたよ・・・」とつぶやくシーンがとても真に迫っていた。

 

タブロイド(98年)

新聞記者の常盤貴子が夕刊紙の出向社員として左遷されそこで働くドラマ。

タブロイド紙にスポットをあてマスメディアによる自己批判的な社会派要素もある。視聴率はふるわなかったが、意欲作として評価できる。タブロイド紙を美化してるきらいはあるけれども。

役者的にも渋い人々がそろってる。佐藤浩市、ともさかりえ、真田広之・・・

常盤貴子のルックスもこの時が一番完成していると思う

fod.fujitv.co.jp

このドラマは1話完結の形式だが、本筋は無罪を訴えている殺人罪の被疑者真田広之を信じて取材し、世論を動かし、無罪にまでもっていったが結局は真犯人だったという本筋である。この真の動機がこのドラマの主題である。

あっさりネタバレをすると、タレントの自殺未遂を取材するメディアが大挙し娘がエレベーターに乗れず寒さで凍った非常階段をのぼった結果転落死した。そうしてメディアに復讐心を抱くという筋になっている。

ここらへんの最終話で描かれるところだけど、マスメディアの自己批判と批判しながらも止められない好奇心の描き具合がとても興味深い。

この作品はこういうドラマっぽくないテーマを掲げて、それはなかなか面白いのだが、結局この作品は後の世に伝えられてない。知る人ぞ知るB級作品としてすら残っていない。たぶん、視聴者はこのドラマで描かれているマスメディアの姿を通してそれを享受する自分を思い浮かべるのだ。だから、メディアの自己批判という人が食いつきそうなネタが、かえって自分に刃を向ける。

結局私たちはたった1人の人間の輪郭すら正確に伝えることができなかった。でも誰もそのことを振り返ったりしない。人々はもう彼を忘れた。素早く飛びついては飽きるというこの世界のルールに従って。

 

美しい人(99年)

美容整形外科医の田村正和は夫である大沢たかおからDVを受けて逃げ出してきた常盤貴子を亡くした妻そっくりに整形して・・・というなかなか複雑な恋愛ドラマ。サスペンス的要素もあるかもしれない。

脚本は野島伸司。90年代の野島伸司といえば「高校教師」にはじまり過激な描写を伴う社会派ドラマで名を馳せていたが、98年の「聖者の行進」でその過激さをバッシングされたせいか、この作品はマイルドな味付けになっている。

主題歌挿入歌がジェーンバーキンだったりサブタイトルがハーブにちなんだ名前だったりいろんなところがおしゃれなドラマ。タイトルバックもなかなかいい。

味付けはおしゃれなんだけれども、人物の設定はなかなか闇を感じる。

例えば、田村正和は大学時代の友達二人と三人で亡き妻のことが好きだった。亡き妻はくじ引きで結婚相手を選んだ。でも亡き妻が死んだあと友達の一人と関係があることや娘も自分の血をひいてないことがわかり・・・

そういう事情のなかでも亡き妻の顔そっくりに整形するというところにやばみを感じる。この役柄はまあ結構気持ち悪さを感じるわけなんだけれども、田村正和の存在感で均衡が維持されている感じ。

この設定はまだ転回があるんだけど、そこまでいうとなにからなにまで語らなくてはいけなくなるからやめておく。

 

個人的な感想としては、設定が闇よりで展開も飽きさせなくてテーマも深いものがあるから複数回観たくなるんだけど、もう一回観るとわりと展開にアラがある。連続ドラマあるある。

あと、野島伸司脚本全般にそうなんだけど母性愛的なものへの信仰心を感じて鼻につく。90年代って結構そういう作品多かったけど、そういうカビくささに耐えられるなら観る価値はあると思う。

 

ビューティフルライフ(00年)

美容師の木村拓哉と難病で車椅子の常盤貴子の恋愛ドラマ。

あるときまでBLという略称はこのドラマのことを指してると思ってました。

ドラマ史上最大の視聴率男である木村拓哉の作品のなかで最高の瞬間最大視聴率を記録した(41.3%、ちなみに最高平均はHERO)。ロンバケ・ラブジェネに連なるキムタクの恋愛ドラマとしては最後の成功作といえる。

この作品を一言で言うと豪華キャストで一般的なテーマを丁寧に作った良作。

木村拓哉と常盤貴子という90年代を象徴するメイン。前半は車椅子という”壁”を挟んだ恋愛、後半は死に近づく病気と恋愛。全体的に目新しさはないけど、穴はない。視聴者の声に耳を貸さずに1話で仄めかされていた通りに常盤貴子が死ぬエンディング。オーソドックスを極めたような作品。

このドラマは常盤貴子は結構可愛い。みかん3つでお手玉してるところとか、そういうちょっとした場面によさがある。モノローグも、常盤貴子の低くて甘い声がはまっている。

あとはキムタクがキムタクであることに耐えられるかどうか。

 

もうひとつ。B'zの今夜月の見える丘にが主題歌。B’zのおそらく最後のミリオンセラーのこの曲はセールスの割にいまいち人気がないけれども、このドラマと併せると歌詞が合っている。ドラマの二人の世界の違いと歩み寄りみたいなものが歌詞からうかがえる。タイトルバック映像も、サビの部分と二人が丘へむかって走っている姿が合わせられている。作中では常盤貴子は一回も歩かないところをタイトルバックで手を繋いで走っている姿を見せられるとなかなかエモいものがある。最終回の後は特に。

 

カバチタレ!(01年)

信じる者は救われるを心情とするウェイトレス常盤貴子と信じる者は救われないという行政書士深津絵里のコメディドラマ。法律要素もあるけど、まあ見やすさのために誇張されてる面が強くて話半分に聞いておいたほうがいいだろう。行政書士という職業への誤解を広めた罪深い作品でもある。

このドラマの見どころは常盤貴子と深津絵里の軽妙な掛け合い。一応法律ものの分類だけど気楽に観ることができる。15年以上たった今だと結婚への拘りの強さが観ててうざかったりそれ言っちゃっていいの?という部分もあるけれど。

でも確かに考えてみたら仕事と結婚といい男の話しかしてないかも

このドラマに関していえば一番嵌っているのは深津絵里。気が強く弁は立つが常盤貴子に対してツンデレだったりするところがいい。男性との恋と結婚の話も多々出てくるが、基本ラインは二人の関係性の話である。人を信じない深津絵里が常盤貴子に対して「あなたが助けにきてくれるって信じてた」というシーンはエモエモ。ぶっちゃけ二人で結婚すればいいんじゃね?っと思う人は百合を感じる人でなくても多くいたと思う。

コメディらしく妄想シーンがところどころに挟まれ、二人で割といちゃいちゃしてるのもよき。百合要素としては上で紹介したひとり暮らしより常盤貴子のタキシード姿がす地味にイケメン度が高かった。顔がいい人はどんな格好でも絵になるんだね。

この作品の最大の欠点は弟役で出てきた山下智久がとにかく棒であること。その後の飛躍を思うと起用は無駄じゃなかったんだろうが、まわりが芸達者だから目立つ。

 

結び

カバチタレは上で紹介してきた作品とは雰囲気が違う。トレンディドラマが流行った時代の終焉を感じられる。実際、00年代を少し入ると恋愛ドラマは一切流行らなくなる。それと因果関係があるとはいえないが、常盤貴子もドラマから映画・舞台へと活躍の場を変えていく。

それから20年近くたった2019年、グッドワイフで久しぶりに連ドラの主役をする常盤貴子はどうなるだろうか。舌足らず感のある彼女に弁護士役は合わないという声もあるし、往年の俳優をドラマに呼び戻して成功した例は少ない。向かい風要素は少なくない。

「連ドラの女王」だった時代のファンとしては怖さと楽しみの半々くらいといったところ。

 

配信サイト

配信の有無(〇は見放題プラン入り、△はレンタル)
ドラマ名 U-NEXT hulu ビデオマーケット dTV Paravi FOD
愛してると言ってくれ ×
真昼の月 × × × × × ×
ひとり暮らし × × × ×
理想の結婚 × × × ×
最後の恋 × × × × × ×
タブロイド × × × ×
美しい人 × ×
ビューティフルライフ × × × × × ×
カバチタレ! × × × × × ×

2019年1月12日時点執筆時点確認。ご自分でもご確認ください。

性暴力描写のある真昼の月、解散したSMAP出演の最後の恋・ビューティフルライフは今後も配信の見込みは薄いと思います。

DVD化はされているので在庫があればDVDレンタルは可能だと思います。