令和2年度司法試験。
新型コロナウィルスの影響で歴史上初めて延期になった司法試験。
あれから1年とちょっとたって令和3年度司法試験結果発表の時期になった。
もうずいぶん昔のことになったけど忘れてしまわないうちに。
ちなみにリアルタイムでの感想集はこちら
受ける前と受けた後が中心で試験期間中どうだったかは書いてないから、今回はそちらを中心に思い出したい。
ざっくり前史
令和2年度の試験は受験回数5回目だった。つまり受験資格最後の年だった。
すでに就職してから4年目。
最後の1回にすべてを賭けてみたいという自暴自棄的な挑戦心と、一度諦めて離れた世界にすべてを賭けるのは馬鹿げているという現実的なチキン心がせめぎ合った結果、後者を選んだ。
3月時点の予備校の司法試験模試ではB判定。良い成績ではないが望みがないわけでもないくらいのポジションにいた。
令和2年(2020年)4月。
日本でも新型コロナウイルスの脅威が認識されはじめて、7日に緊急事態宣言が発令された。
発令日の日本国内の新規感染者数は368人。
2021年8月現在では1日2万人の新規感染者が出ているためもはや時代が違うんだけれど、みんな今よりも感染症を恐れてた。
そして10日に司法試験の延期が発表。
一方の私はといえば、人事異動で新しい職場になり引越し。覚えることもたくさん。
新年度の忙しさもあいまって4~6月は平均月40時間くらい時間外労働してた。
労働日で割るとたったの2時間じゃん、という気もするけど20時くらいに帰ってきてすぐにギアをあげて勉強という気分にはならない。
たぶんこの時期の平均勉強時間は2時間を割ってたと思う。
コロナによる試験の延期は2つの側面があった。
有利だったのは仕事の閑散期に試験日が移ったために休みを落ち着いてとれるようになったこと。たぶん5月だったら受けに行くこと自体も難儀してた。
不利だったのは他の受験生が充分準備する時間をとれたこと。これは数字にもあらわれていて、令和2年度の合格者は1回目受験生の割合が多い(合格者総数との比でいえば令和2年度は約66%、平成31年度は約58%、平成30年度は約56%)。
一時は試験自体の中止や再延期の憶測が流れながらも、試験は8月12日から行われることになる。
前日
試験会場は家から遠く離れた仙台会場を選んでいた。
最後の試験だから終わったら旅行しようと思っていたのだ。
旅行なぞ言語道断、と怒られてしまいそうだけど試験場所を選んだのはコロナ禍の前なのでこればかりはしょうがない。
仙台にしたのは、人数が少ないのと新幹線駅からのアクセスがいいのが理由。
前日入りしてホテル法華クラブ仙台という宿に泊まった。おすすめ。
今は亡きGo To トラベルキャンペーンも相まって3000円くらいで泊まれてしまった。
しかも朝食バイキング付き。
ちなみにそれまでは五反田会場で受けていたのだけど、その場合は山水荘がおすすめ。
結果的には仙台を選んで正解だった。
五反田よりもはるかにゆとりある空間だった。
1日目(選択科目・公法系)
選択科目は知的財産法。
私の新三大司法試験失敗原因の1つは選択科目のチョイスだったと思う。
民事系が苦手なのに興味で選んだ知的財産法を最後までお供にしたこと。
しかも勉強時間をしっかり取ったほうが報われるタイプの科目だったから兼業受験生向きでもない。
環境法か経済法あたりに乗り換えるべきだった。
実際、特許法は設問3(標準必須特許)がほぼ白紙状態で感触は良くなかった。
ただ、知的財産法についてはかけた時間が少なかったし模試も悪かったからここで点数が低いのは想定内
なお結果は
45点。下40%、C~Dくらいで割とアカン点数だった。
著作権法も論点自体は大外ししてなかったものの論述の密度が薄いと採点実感で指摘されるタイプの答案で、点数が伸びなかった。
公法系は唯一得意とする分野、というか複数回受験生は割とみんな得意にしてる気がする。そんなに勉強量いらないからね。
憲法は設定する権利が分かりやすかった分たぶん全体からしても易しめだったんじゃないかな。
行政法は、時間が足りなかった。農振法について読んだことがないわけでもなかったから行けるかな?と思いながらも設問2は薄く終わってしまった。
これは司法試験あるあるだけど、最後の設問ほど易しいことがあってこの年の行政法もそういうタイプだったからちょっともったいなかった。
結果は
結果はAAの120点くらい。いいけど行政法で冷静にやればもっと伸ばせただろうなー、って感じ。
2日目(民事系)
私の新三大司法試験失敗原因の1つ、というより全部ともいっていいのが民事系が苦手なこと。
なんだろうね、予備校の全国模試なんかだとそんなに壊滅しないんだけど本番だと壊滅する。応用力がないのかな。
過去の経験を生かしつつテンパらないということが目標だった。
民法は設問1が改正部分がっつりでさっぱりだった。
設問2は隣地通行権とかいうよくわからないその場で考える問題、設問3は表見代理と日常家事のとても典型的な論点で逆に不安になる問題で後ろ2問に集中して余った時間で設問1をやった。
配点が1番多い設問1の感触が悪いことに不安を感じつつ。
商法は設問2が株式併合でそんなに書く量ないのに、盛りだくさんな設問1との点数配分が60:40であることに疑心暗鬼になりながらやった。
民事訴訟法は完全にスタミナが切れてて設問3の課題1をほぼ白紙で出した。
結論に誘導がついてるタイプの問題(設問2で「仮にXがY2に対する訴えのみを取り下げることができるとして」なんて書いてる)なのにこれを白紙にしたのは意味がわからん。一番ひどい失敗だったと思う。
結果は
民事系はBBDの140点くらいで、後ろ半分。よくはないが苦手科目としてはふみとどまった感じ。
特に民法は配点の高い設問1で爆死したにもかかわらずましな評価。改正1年目だから許されただけかもしれない。
民訴は案の定。この年のD評価は2800人中2000~2500番なのでかなり低い。
民法民訴で明確なミスをして、知財のマイナスも含めて後がない状態、もしかしたらもう終わってるかもなんて気分になった。
すべてを忘れるために居酒屋で飲んで高い寿司を食べてから寝た。
中日
真夏まっただなかだったからただただ暑かった。
ホテルで朝食を食べてちょっと外に散歩に出てあきらめて生まれて初めてUBER EATSを利用して昼食夕食をとった。住んでたところが配達圏外だったから使う機会がなかったんだ。
便利な時代に生まれたもんだ。
中日に勉強するかどうかは意見の対立があるところかもしれない。
数回の受験経験を経て山あては特にせずにまとめノートだけ見直すことにしてた。山あてをすると復習範囲が偏るから。
3日目(刑事系)
刑法は出題形式が微妙に変わってたね、設問2・3。
どれくらいの量を求められてるのかよくわからなかったしそもそもなにを書けばいいかよくわからなかったから、昔の憲法の反論をイメージして書いた。つまりとても短く。
刑訴は令和元年度の別件逮捕のような説対立問題が来ると思って身構えてたからいつもの形式に戻って拍子抜けした。
論点的にはややマイナー目に入るであろう設問3(悪性格立証)をスムーズに解けたことで心に余裕を持ちながら論文を解き終えた。
結果は
BBの約100点。
感触よりは良くはないが合格圏内最下層にひっかかる点数。刑事系は自分が思った以上に周りが出来るから感触よりも悪い点数になりがち。
まあ採点実感を読むと違法性阻却の判断要素に関わる事実関係の評価を変えてるだけ(刑法設問1)だったり任意捜査の限界の基準を使った(刑訴設問1)り苦言を呈される内容書いてるからこんなものなのかもしれない。
4日目(択一)
限られた時間のなかである程度時間を注いでいたはずの択一。
しかし民法で明らかにつまづく。変に受験歴が長いせいで短い時間で解いているなかで旧法と改正法が混ざってきてどっちが正しいかわからなくなる瞬間が多くあった。
昔の問題の記憶がフラッシュバックしてくる感じ。
明らかに失敗した、と思ったところで精神のバランスを崩して残りの憲法刑法も精彩を欠いた。
次の日(月曜日)もありがたく休みをとっていたので最終日は豪華な宿をとっていたんだけど、よせばいいのにそこで自己採点をした。
結果は107点、前年の足切りラインが108点だから採点した瞬間に「終わった・・・」と思った。足切りでラストか。
今までの試験終了日のなかで最も惨めな気持ちになりながらデラックスキングサイズのふかふかベッドで眠りについた。
その後
8月17日は慰安旅行として仙台を観光する、予定だったんだけどとてもそんな気分になれず午前中は抜け殻になってた。
午後はなんとか気分を奮い立たせて豪華なランチをして、ポケモンセンターに行ったり、コロナ延期になってたFate HF最終章の映画をみた(感想記事)。
なんだ遊んでんじゃんね。遊ばないとやってられないみたいなやけくそな気持ちだったのかも。
家に帰ってから仕事が待ってたわけだけど、今回ばかりは仕事があってよかったかもしれない。択一の結果発表があって足切りを回避したことがわかるまでは虚無でいられたし。
択一の結果が9月下旬、それから1月下旬の論文の結果発表まで長かったね。その頃にはもうなにが出たか忘れるくらいになってたけど。
最終的な結果は
1200番くらいで下位合格。
民訴D以外はB以上で並べたのに低い順位だったから、選択科目が足を引っ張ったんだろうなとは思う。
民法が予想より良かった以外は大体予想通り。
本番での振る舞い方での反省点は、時間配分をミスった行政法と解くべき問題を解かなかった民訴。
あとは準備時間の短さによるものだからしょうがないかなって感じ
試験に受かるか落ちるかはほんとに紙一重で、なにかが変わってればもっと早く受かってたかもしれないし最後まで落ち続けたかもしれない。
でもその紙一重で良くも悪くも人生がこんなにも変わるんだなっているのを修習中の今は感じてる。