四半世記

感想文ページ(ネタバレあり)

オトメ*ドメイン 感想ー男の娘の身体性

 きっかけ

 

ぱれっとクオリアというメーカーから2016年に発売された18禁女装主人公アダルトゲームについて

公式サイトはこちら

qualia.clearrave.co.jp

 

プロフィール欄の好きなものの項目を見ていただくとわかるとおり私の好みは百合によっておりいわゆる男の娘については慣れ親しんでいるわけではないのだけれど、この動画をみて興味をもったのでプレイしてみた。

 

www.nicovideo.jp

 

この実況されてる方が昔からやってたポケモン実況はちょくちょくみていて、チャンネル開設時の理念みたいなものに少しシンパシーを覚えたため、ひとつ買ってやってみたという次第。

 

 

 

大雑把な感想(ネタバレあり)

このゲームは一言でいえば主人公の湊くん(男の子)が女子高に転校する系の話。

湊は性自認は男でそこに葛藤はないけど、自分が中性的な容貌であることに自覚的で、わりと気合をいれて女装をするタイプ。

 

良かった点
  • 絵がきれい。
  • 主人公である湊の容姿と声がかわいい。人気投票1位になるのもわかる。
  • ヒロインの性格とセックス描写がリンクしている、こだわりを感じる(ボトラー→尿、好奇心旺盛→アナル、中二病→言葉責め

 

賛否わかれそうな点
  • 湊がルートによっては優柔不断だったりクズかったりする。容姿と声がいいからキャラとして流せるところもあればさすがにちょっとというところもあった。人によっては受け付けないかも
  • ヒロインのキャラ付けの濃さ。料理下手といっても限度があるのでは(柚子)
  • 基本的には理事長の風莉がメインヒロイン的な立ち位置にいること。

 

悪かった点
  • セックスシーンでバッグ音声として嬌声が流れ続ける。個人的にはうるさかったし不自然な気がした。
  • 共通ルートで風莉が湊にフェラチオをするシーンがある。話の流れ上意味のない描写ではないのだけど、心情的には風莉ルート以外に力が入らなくなった。
  • セックスシーンの絵で湊の身体が描かれない。

 

総評としては、畑違いで受け付けない部分もあったけど楽しめた作品。

特に風莉ルートは、二人の関係性といい(他ルートと比べてパワーバランスが均衡に近い)、風莉の性別にフラットそうな(湊が男であろうが女であろうがどっちでも気にしなさそうな)性格といい、結構好き。

 

その一方で今回一番話題にしたいのが下線太字の点。

 

美少女ゲームにおける主人公の身体

美少女ゲームの主人公(そして乙女ゲーの主人公も)が感情移入しやすいように無個性であるべきかどうか、というのは長い間議論があるところ。

一方で主人公の身体については、描写しない側のほうが強いように感じる。美少女ゲームのセックスシーンにおいて男性はいわゆる”竿役”となっているわけだ。美少女目的でゲームをやっていて男の体を必要以上に見たくないというのは合理的といえばそう。

しかし、オトメ*ドメインは男の娘を題材としたゲーム。そしてその主人公の湊はヒロインを押しのけて人気投票1位になるくらいの素材、絵も声も作りこまれている、だとすればセックスシーンでもっと全面的に出てもいいはず。というよりそれが期待されているのではないか。

 

それなのにセックスシーンになると一般的なアダルトゲーム同様埋没させられてしまう

 

個人的にこれは作品の最大の長所を破壊する致命的な欠点だと思う。

さらに意外だったのが、他の人が書いてるレビューを見て回ってもこの点を強く取り上げるものがほとんどないこと。ところどころで指摘はあるのだけれど、そんなに強く指摘されている感じではない。

その理由を自分なりに考えてみると、アダルトゲーム、ひいてはテキスト主体のゲームの置かれた現状にあるように思う。

現代人にとってテキスト主体のゲームはハードルが高くなっている。ベッドで寝ながら手軽にいじれるスマホでするには画面が小さすぎて、パソコンを起動しなければならない。でもパソコンをつければそのスペックを生かしたゲームができる。3Dの新しい世界もひろがりつつある。そもそも文字を読むのが億劫。

ゲームを作る側の視点からみても、男の娘の主人公がどれくらいうけるのか作成段階ではわからないから、主人公に力を注いでも売上というリターンがあるかは不透明。購入時点ではエロCGで人物を2人気合を入れて書き込むというのは骨が折れる。そもそも人物2人がはっきり写るという構図の経験値が少ない。業界が斜陽だから冒険をしにくい。

 

それでも、主人公の身体は描写されるべきだった。作品の完成度のためにも、もっと大きくエロ表現というものの将来を考えても。

性器にモザイクをかぶせなければならない性表現規制においては男性は、男性の身体が描かれないとペニスという概念がぼんやりあるだけの竿でしかない。唯一残されたその竿もモザイクのなかでは大きい小さいくらいしか特徴をつけられず、エロゲーにおいては小さいとデメリットしかないから、そこに描写の自由はない。

男はそうあるべきというのもひとつの考え方だけれども、男の娘という特徴をつけるのだったら竿にとどめておく理由はない。男の娘というジャンルにはこういう限界、片方の身体のみが詳細に描かれるを吹き飛ばしてほしいという願望もある。

 

オトメ*ドメインにも一応1枚だけ湊くん受けの絵がある。

視点変更パッチということで、とあるセックスシーンをヒロイン視点の絵と文に切り替えられるという内容。ただ、プレイ内容は変わらないので絵の良さが半分くらしか生かされてない。

ボーナストラック的な立ち位置だと思うので中身について言及を避けるけれども、こういう形式のほうが作品の強みを生かせている気がした。もしもファンディスクが出るとしたら、全シーンにこの機能をつけてほしい(贅沢)。

 

雑なまとめ

不満点のほうが長くなってしまったけど、門外漢がやっても良さを感じられるゲームだったと思う。男の娘に関する身体描写は旧来のアダルトゲームの文脈を引きずっていて過渡期な感じがあるけど、他の人の感想を見る限り2010年代後半の消費者は男の娘の身体についてもうちょっと許容性ができているはず。

アダルトゲーム業界で双方の身体が描かれる流れが盛り上がって、その流れで百合ゲーも生産されるようになってほしい。